「ねえねえ!!中間テストの発表見た?!
オレ自身、この場面によくいる。
兄ちゃんが1位だって!!」
野球部一番のお騒がせ野郎の意外な1面。
最初知った時は、オレも驚いたっけな…。
Another World
「よーっす。」
「あ、兄ちゃん!!」
「猿野くん!」
兎丸が、猿野天国の驚愕情報にて部室を一騒動させた後。
話題の主、猿野天国が野球部部室に入ってきた。
「兄ちゃん、テストの順位表見たよ!
すっごいじゃん!!どうやってカンニングしたの?!」
「って、カンニング前提かよ!!」
一足早く天国に近寄った兎丸は開口一番かなり失礼な事を言う。
まあ勿論冗談ではあるが。
「ちゃんときっちり実力だっつーの!
信じられねーってのか?!」
「う〜ん、確かにびっくりしたっすね…。最初は信じられなかったッす…。」
部内一の良識派、子津も本音を漏らす。
確かに、いつもの天国を見ていたら、まさかこの男がこんな頭脳を持っているなどとはなかなか思えない。
「ね、ネヅッちゅまで…っ。
ひどいわ、明美泣いちゃうわよっ!!」
天国はすばやく明美になると、傷ついたフリをする。
多分、既にクラスで散々騒がれたのだろう。
天国の態度や、表情の端から、「またか」という気持ちがかすかに見て取れた。
「わ〜〜っごめんっすよ猿野くん!!」
「ははっ、別に気にしてねえって!
でもマジでカンニングはしてねーかんな。
これでもオレ、ベンキョーは得意なんだぜ?意外だろ。」
天国は笑いながら言った。
それを見ると、他の皆は「知っている猿野」に安心する。
オレもそうだった。
でも、その後オレはまたもう一つ違うあいつを見かけた。
それはこいつらは知らないこと。
############
「好き、です。」
消え入りそうな女子の声。
よくある告白シーンと言う奴だ。
オレにとっては厄介なものでしかないが…。
そこで告白されてたのは、猿野天国。
こいつなら、オレと違って女好きを公言して憚らない奴だし。
喜んで受けるんじゃないか。
そう思った。
だが。
「…あの、あんた確か三日前に犬飼に告白してなかったっけ?」
「あ…。」
(はあ?!)
あいつの言葉に、オレは愕然とした。
オレはいちいち女の顔は覚えていないので、全く気づかなかったが。
どういう奴なんだ?
そう思っていると。
「あ、あの…でも、犬飼クンには断られちゃって…。」
その女は顔を赤らめ、少し泣きそうな顔で言った。
「うん、っていうかアイツは女の子自体苦手だから気にしなくていいけど。」
天国は全く動揺せずに女の言葉を聴く。
「それで…犬飼クンと付き合えないなって諦めて…。
それで、このごろ図書館で猿野クンが本を読んでる所を見て、カッコいいなって思って…。」
「…一応聞くけど、それ何日前?」
「えっと…昨日…かな?」
なんつー変わり身の早さ。
そんなに女ってのは恋愛したいのかと、感心する。
それより、それ恋愛か?
「…犬飼を1日で諦めて?」
「うん。」
「で、昨日にオレを見かけて。」
「うん。」
女の方は全く悪びれない。
というかおかしいと思ってはいないのだろう。
彼女は彼女で本気だと思い込んでいるのだから。
「…それって別にオレじゃなくてもよくないか?」
「ええ?!そんな言い方酷いと思う!!
恋って時間じゃないじゃない!!」
「いや、まあ確かにそうとも言うけど…。」
「信じてくれないの?」
っていうか普通思い込みだと思うだろう。
そうオレが思いながら見ていると、あいつは一息ついて、口を開く。
「…信じてないわけじゃないよ。
あんたはあんたなりに本気でオレの事(今は)好きって言ってくれてるのは分かるから…。」
そう言って、優しく微笑んだ。
それはとても暖かくて、綺麗な。
「…猿野Kん…。」
その笑顔を見て、その女は顔を赤らめる。
「でもごめん、オレ好きな奴いるから。」
その言葉に、オレは胸の隅が急に冷えたのを感じた。
知っているはずだった。
あいつが鳥居を好きなことは。
「そ…そう、なんだ…。」
「ん、ごめんな。」
あいつはそう言って、女生徒の肩に軽く触れた。
「ううん…私こそ、ごめんなさいっ!」
彼女はそう言うと踵を返し、走り去っていった。
「……。」
結局オレは、その場面を一部始終見てしまっていた。
すると。
「こら。そこの出歯亀。
なんか用か?」
あいつが、こちらを向いてそういった。
…どうやら最初っから気づかれていたようだ。
「…見るつもりじゃなかったんだけどな…。」
「ああ、お前の事だから動くに動けなくなったんだろ?どーせ。」
図星なのでオレは何もいえない。
「で、オレからの告白の返事は?」
「は?」
(告白?何言ってるんだこいつは…)
好きな奴 いるから
「あ…!」
################
「おーし今日はここまでだ。
てめーらとっとと帰れよ〜。」
監督の部活終了の号令と共に、天国の周りに人が集まった。
「ねーねー兄ちゃん!後で僕にも勉強教えてよ!!」
「あ、よかったら僕も・・・。」
「……。」
次々と群がってくる奴らを尻目に。
「悪い、今日は先約あんだ。」
天国はそう言って断った。
「え〜〜!先約って?!」
「やあね、乙女のプライベートは探るもんじゃないわよぉ?」
天国は軽く兎丸たちをあしらうと、部室を出て行った。
「さて、犬飼くん。私たちも帰るとしましょうか。」
「…とりあえず今日は先に帰っていいぞ、辰。」
「おや?何か用がおありでしたか?」
「…ああ。」
あいつが屋上で待ってるから。
今日もオレ、犬飼冥を あいつ 猿野天国は 傍にいさせてくれるから。
あいつのもう一つの世界に いることを許してくれるから。
end
幸寿さまよりリクエストいただきました!メガネ・ハン猿な猿総受け・犬猿です!!
なんだか無駄に詰め込んだ割にまとまりがなくなりました・・・。(いつもか)
一応これ最初から最後まで犬飼くんの1人称のつもりで書いてます。
でも犬飼くんが猿野ラブなとこがほとんど表現できてませんし・・・。
かなりの難産だったのですが・・・。
幸寿さま、思いっきり遅れた挙句にこんな物でげに申し訳ありません!!
できましたらまたいらしてくださいね!
ご来訪いつでもお待ちしています!!
戻る